何年か前に実家に帰った際、リビングのテーブルに置かれていたので母親に読み終わったかどうか確認してから貰ったままだった。リブロの書店カバーがかかっていてどことなく懐かしい。池袋のリブロが無くなって久しい。
何篇か収録されていた。
- きんぎょの夢
- 母の贈物
- 毛糸の指輪
表題となる『きんぎょの夢』は、おでん屋を営む女性が妻子ある人に口説かれる話。『母の贈物』は、若い男女がいよいよ結婚式をあげるとなって、女の方の母が亡くなっていると聞いていたけど、実は生きていて、みたいな話。『毛糸の指輪』は旦那が窓際族をやっている夫婦と若い女の子が知り合う。夫婦には子どもがおらず、その女の子を自分の子のように思いながら色々悩みを聞いていったりしていく話。
こうやって一言でまとめていくと身も蓋もない気もするが、大抵の物語は一言でまとめられるようになっている。
向田邦子作品を初めて読んだけれども、台詞回しが抜群に上手い。その場の空気感が変わる一言を差し込んでくる。ドラマを引っ張る力がとても強い。あと会話が生々しいじゃないけど台詞として読みやすそう。とても自然な感じがよくわかる。話し言葉になっている。
『きんぎょの夢』で、主人公は三姉妹の姉で、真ん中の子が旦那の不平不満を漏らすシーン。不倫に片足突っ込みかけている主人公が「男が不倫をするのは悪妻がいるから」などを滔々と語っていると、一番下の妹がポロっと一言で釘を差すところなんかは読んでて思わずうわっと声が出てしまった。すごい。
といいつつ、この本読んでて状況がパッと掴めずに読み返してしまうところが何箇所かあって地の文がよろしくない。なんなんだろうなと思って表紙をよく見たら「向田邦子 ”原作”」とあった。どうやらドラマ用の脚本を中野玲子さんという方が小説として書き直したらしい。なるほど、台詞回しの巧みさと地の文のわかりづらさ。その文章力の乖離に合点がいった。
この作品から向田邦子に入るべきではなかった気がするのだけれども、彼女が一から書いた小説をまた読んでみようと思う。



